まちづくりとアートの未来をつくる「第1回 札幌駅前通アワード」の受賞作品が決定しました!

まちづくりとアートの未来をつくる「第1回札幌駅前通アワード」      グランプリ受賞作品発表

札幌駅前通アワードは、札幌駅前通を中心に札幌を文化的で創造的なまちとして発信することを目的に誕生しました。第1回目は、札幌三井JPビルの5階にある「眺望ギャラリー テラス計画」を舞台とし、テラス計画の機能や空間を生かしたまちづくりのプラン(まちづくり部門)、現代アートの作品展示プラン(アート部門)の2部門を募集しました。国内・海外より沢山のご応募をいただき、誠にありがとうございました。


それぞれの分野でご活躍されている審査員による審査会を11月下旬に行い、以下の方々にグランプリが決定いたしましたので、選定結果と審査員講評を記載いたします。

https://www.sapporoekimae-management.jp/award/

●アート部門|グランプリ
 青木真莉子「知らない衣服」

 アート部門プラン展示期間|2019年4月6日(土)~2019年5月12日(日)※予定

 

https://www.sapporoekimae-management.jp/award/

●まちづくり部門|グランプリ
 陳婕萱+五十嵐淳建築設計事務所「多様なきっかけを生む、スタイロの丘をつくる」

 まちづくり部門プラン展示期間|2019年5月18日(土)~2019年6月30日(日)※予定

https://www.sapporoekimae-management.jp/award/

また、グランプリ受賞には至りませんでしたが、今後の活動がとても期待されるという観点から、奨励賞として各部門3組が選出されました。※奨励賞の詳細については後日発表致します。

●アート部門|奨励賞
 菊地風起人「北で暮らそう」
 長野櫻子「outlined here」
 盛圭太「空のない雲」

●まちづくり部門|奨励賞
 team schweiz「You've got letters-宛名のない⼿紙が⼈々を繋ぐ-」
 中西邦彦「宿り木」
 ハモニカレポート「図書のコミュニタス」

 

https://www.sapporoekimae-management.jp/award/

アート部門|審査員講評

●小川希(Art Center Ongoing代表/テラトテラディレクター)

 今回「札幌駅前通アワード」の記念すべき第一回目の審査員をやらせていただきましたが、「レベル高!」というのが僕の率直な感想です。聞くところによれば、北海道以外からわざわざ会場となる「眺望ギャラリー テラス計画」を下見に来た人も少なくなかったそうで、応募用紙からその意気込みの熱さをビンビンに感じるプランが沢山あり、審査にも自然と気合が入りました。そうしたツワモノ揃いの中、特に気になった三人の作家さんについてここでは触れてみようと思います。
 まずは菊池風起人さん。絵画の作家さんですが、ご自身の作品について「どんな人に対してもひらけた絵画」と書いていらっしゃいましたが、確かに観るものを選ばない、一度見たら決して忘れられない画風の持ち主。例えるなら、地方で個人商店を営むおじちゃんが独学で絵を学び、店のでかい看板を自分で描いたかのような感じ。悪口ではありません。彼の絵からは、絵に対する愛が伝わってくるのです。ヘタウマ的な感じを狙っているのでは決してないことはすぐわかる。なんというか、きっと本人は素直で優しい人なのだろうなと想像してしまうのです。そんなこと絵からわかるのかと言われそうですが、おそらく誰が見てもわかります。出身を見てみたら北海道留萌郡の方でした。北の大地が育てた感性なのですね。現在は東京にお住まいとのことですが、都会の非人間的な荒波に飲み込まれることなく、いい人オーラの溢れ出る世界観をこれからも地道に育てていって欲しいと思います。絵、うまいです。
 次は長野櫻子さん。「内」と「外」という哲学的なテーマのもと、アニメーションのプランを送ってきてくれました。アニメで描かれるのは「眺望ギャラリー テラス計画」内の柱やガラス面、棚や本など、その場に据え置かれていて、その場所を構成しているものとのこと。うーん、かなりミニマルで、カッコ良さそうです。一見すると何も描かれていなさそうでいて、自分の立っている場や時空を意識せざるを得ない仕掛けになるのでしょうか。世界のなりたちを足元から揺らがす作品っていいですよね。ただ、こうした哲学的テーマをアニメーションに落とし込むというのが少しだけ引っかかりました。アニメって現実をディフォルメする効果があって、それと長野さんが掴もうとしている世界の成り立ちを疑う客観的な視点との相性がうまく機能するのかなって。うーん、でも、実際見てみたら相性ばっちしなんてこともあるかもですよね。
 そして青木真莉子さん。彼女はみごと最優秀賞に輝きましたが、僕自身、実際に完成したものを一番見てみたいと思ったプランでした。北方民族の衣服とインターネット上に上がる万人化された衣服、それぞれの情報をデータ上で組み合わせ、それを元に実際の衣服を作る。さらにはその服に魂を宿らせる!?とのこと。デジタルなのか、アナログなのか。アニミズムなのかマーケティングなのか。とにかく、どうなるか全然はっきり見えないけど、なんかオモロそー。しかも来場者はその衣服をきて写真を撮ることもできるそうで、インスタ時代に迎合していると見せかけて、公的に心霊写真を撒布する仕掛けのようでもあります。魂の宿った衣服、とっても気になります。まあどんな芸術作品にも作者の魂は宿っているのかもしれませんが、これぐらいブッ飛んだ作品が第一回目の最優秀賞だなんて「札幌駅前通アワード」今後も目が離せませんね。とりあえず、春がきたら魂の宿った青木さんの衣服を着てみんなで写真撮ってやりましょう!今回はありがとうございましたー。

 

●端聡(美術家/アートディレクター)
 初回のコンペティションとしては応募数も多く、全てのプランを見るだけで、かなりの時間を要した。その中で目に留まったのが、青木真莉子、長野櫻子、盛圭太の作品プランだ。3名とも北海道外のアーティストである。北海道に拠点を置く私にとっては少々複雑ではあるが、札幌も現代アート発表の場として全国区に成りつつあることも実感した。
 さて、各アーティストの感想に移ることにする。

 青木真莉子のプラン「知らない衣服」であるが、青木の作品制作における根幹がプラン資料を見る限り、日本の神道や縄文に存在するアニミズムなど霊的存在を現在に顕在化し、現代人が忘れつつある自然に対する畏敬の念や古の哲学を美術を通じて再考する企画だと感じた。その大元のコンセプトを踏まえ青木は今回、衣服にフォーカスし、その役割を大きく2つに分けた。一つは物理的、自然的外界からのプロテクト、もう一つは人間社会との関係性における個人のアイディンティ確立である。古の時代から現在までの衣服と共に歩んだ人類のアイディンティの移り変わりと、目には見えない魂という周波数の関係性を現代人である青木が新たな創造としてインスタレーションするプランは興味深い。
 長野櫻子のプラン「outlined here」、このプランは見る側の思考を一旦、宙吊りにさせるものだ。プランは、今回の展示が想定されるテラス計画内の壁面と床面にモニター複数台を設置し、それぞれのモニターの対面にあたる風景が動画として映し出されるもので、要するに壁面のモニターには、その対面にある窓ガラス越しの風景が映し出され壁面を見ながら外の風景を見ることとなり、外と内に対する感覚のズレが生じるインスタレーションである。「外」と「内」「他」と「自」それらの関係性と言うより、在り方のあるがままを客観視する装置と言えよう。長野は単に物理的視覚的な装置としての面白さを演出する為にプランニングしているのではなく、その場に立つ見る側の「自己」を自らが俯瞰し、もう一人の「自己」を想起させ、仏教で言う真我へのアプローチを想定しているかのように感じられる。物質界で起こる全ての現象は、元々の意味はなく見る側の物理的な立場、思考、記憶によって幾つのも意味付けがあり、そこには善も悪も存在しない。物質と自己との「間」を客観的に捉える瞑想空間を長野は創造したのかもしれない。
 もう一人、気になるプランとして盛圭太の「空のない雲」を挙げたい。先に挙げた2人とは少々方向性が違うフォルマリズムが際立った作家である。線によるドローイングではあるが、通常のペンや絵の具での線画ではなく糸を線の素材にしているのが特徴だ。その特性を活かし限定された平面(パネル、紙、壁面など)から糸がはみ出し、空中に線を描くインスタレーションを試みている。均一の糸による物質的な線は比喩として現代における制度や社会に見立てられると本人は語り、制度と見立てた線(糸)を付け加える度に発生するバグが社会制度の中に見られる小規模な混沌とも捉えることが出来るが、その想定外に起こる偶発の発見はコンセプトを超えたところの作家における表現主義的な醍醐味なのであろう。
 今回初めてとなるコンペティションであったが、ここに挙げた3名以外にもレベルの高い作品が実際に多かった。次年度以降も大いに楽しみである。

 

●今村育子(札幌駅前通まちづくり株式会社/美術家)
 札幌駅前通まちづくり株式会社として、第一回目の札幌駅前通アワードに多くの方にご応募いただいたことを、心から感謝申し上げます。まちづくりとアートの未来をつくる「札幌駅前通アワード」は、札幌駅前通を中心に札幌を文化的で創造的なまちとして発信することを目的に誕生しました。
 札幌都心部にはチ・カ・ホやアカプラ、テラス計画など、それぞれ異なる目的・理由でできた場所がいくつもあり、そこの運営を担当する私たちは、作品展示を通じて賑わいを作ったり、多様な価値観に触れる機会や考えるきっかけを作ることができると考えています。誰でも無料で作品に触れることができる公共的な空間だからこそ、普段美術館に行かない人や子供達が、初めて芸術文化に出会う場所でもあります。札幌には現代美術館がありませんし、このコンペでは、現在評価が確定していないものでも、今生きている私たちにダイレクトに伝わる、現代的な芸術表現を求めていました。第一回目の今回は、多目的であるがゆえに活用が難しいテラス計画が舞台でしたが、各地から力作が集まって本当に感激しています。
 グランプリを受賞した青木真莉子さんのプランは、その場その時の文化がダイレクトに反映される「衣服」をモチーフに、北海道の特徴を独自の解釈で作品化しているところに惹かれました。インターネット上に上がる万人化されたモチーフと北方民族の衣装が融合したものを身に着けることで、脈々と続く私たちの人類の歴史を感じることが出来るのかもしれないと想像するとワクワクします。
また展示方法も屋外・屋内の展示バランスが考えられており、屋外で北海道庁をバックに記念撮影する人々に訴えるような、場所を解釈していたところもユニークでした。観光客から地元住民まで老若男女が訪れる場所で、目的や文脈の違う人々に、公共の場で服を着てもらうという美術的行為がどこまで通用し、鑑賞者に何が生まれるのか楽しみです。
 惜しくもグランプリは逃しましたが、他にも魅力的な作品が集まりました。
 盛圭太さんの「空のない雲」は近代的で、商業施設でありビジネスパーソンが集まる赤れんがテラスに最も似合う作品だと思いました。独自の手法で場所を読み替えながらトレースし、空間全体に広がるドローイングは繊細さとダイナミズムを含み、見るものを惹きつけるであろうと想像しました。個人的にとても拝見したかった作品です。
 菊地風起人さんの作品群は、独自の構図と世界観でとても印象的でした。そもそも絵を描いたり自分の好きな事をやって生きてくって素晴らしいよね、と全力で訴えてくるようなエネルギーが内包されていて、大げさに言えばこの日本の中で生きることの意味を問われているようにも感じました。そんな作品は中々作る事が出来ないと思いますので、菊地さんのさらなる活躍に期待しています。
 三者三様の表現方法で、正直選ぶのは難しかったのですが、多彩な表現の応募があったことはとても喜ばしく、このコンペの可能性を感じました。地方都市でコンペを開催することは様々なハンデがありますが、審査員の方々にもご協力いただき、素晴らしいスタートを切ることができましたことを心から感謝しています。この事業を継続していき、札幌の文化発信に貢献したいと考えております。

まちづくり部門|審査員講評

藤村龍至(建築家/東京藝術大学准教授/RFA主宰)
 「第1回札幌駅前通アワード まちづくり部門」受賞者の皆さん、おめでとうございます。

 「まちづくり部門」の募集要項には(1)場所の魅力を引き出すこと、(2)周辺地域へ波及すること、(3)持続可能性があり、(4)新たなコミュニティを形成し、(5)実現の可能性が高いプラン、と少々欲張った(?)お題が与えられていました。
 今回提案の対象とされた「テラス計画」がそもそも人が集まりやすい場所というよりは都市の隠れ家のような場所であるため、戸惑った応募者の方も多かったのではないかと思いますが、
いずれも「テラス計画」の場所を読み解き、可能性を引き出そうとされていることに感銘を受けました。審査全体を通じて多様な方向に開かれた応募者の皆さんの書類を拝見し、ここで選ばれるべきまちづくりへの提案とは何か議論しながら、提案のなかに「絵を作れること」と「人を集められること」の表現力を読み取ろうとしていたように思います。現代のまちづくりにとってこれらのスキルは、事業性という観点から、特別なスキルとなっているように思います。
 陳婕萱+五十嵐淳建築設計事務所案は、テラス計画の空間的な課題の一つである北海道旧本庁舎(赤レンガ庁舎)との視覚的な関係を土木工事などで使用される大型のスタイロブロックをつかって「スタイロの丘」をつくることで改善し、その丘の活用を公募によって委ねようという提案でした。テラス計画の場所を読み解き、空間の全体を使って印象的な風景を生み出そうとしており、高く評価されました。またその「絵を作る」能力は応募書類の全体からも感じることができました。
 ハモニカレポート案は、「本」を用いて「札幌のまちを面白くする人」と「テラス計画を訪れる人」の間に緩やかなつながりを生み出す、という提案でした。本で人をつなごうとしていることに加え、独自の音楽イベントを通じて人を集める経験があり、媒体を準備しているという点も関心を集めました。応募書類の全体から、まちづくりに必要な企画力や調整力、発信力を感じることができました。
 第1回ということもあり、賞の役割や機能について議論がありました。例えばアワードの役割として、入賞者同士を繋げる、というものもあるかも知れません。賞への応募を通じてユニークな人が集まり、そこに集まった人々がそれぞれの得意分野を発揮してプロジェクトを起こす。そのようなダイナミズムがこのアワードのなかから生まれればよいのではないでしょうか。
 この「札幌駅前通アワード」は、そのように札幌のまちづくりをドライブさせる役割を備えていって欲しいと思います。同時にいずれは「絵を作るだけでよいのか」「人を集めるだけでよいのか」という批評性を問いかける役割にまで育って欲しいと思っています。アート部門とまちづくり部門で両者が問いかけ合うような存在に高め合うことを期待します。

 

●酒井秀治(まちづくりプランナー/SS計画代表)
 初開催となった今回の札幌駅前通アワードは、「テラス計画」という札幌都心の一等地にありながらも動線が見えにくく奥まった場所にあり、なおかつ通常は誰にでも開かれた眺望・ギャラリーであるのに対し、イベント時には半プライベート化して空間が緩やかにシェアされる多面性を持つスペースの活用が主題だった。さらに、テラス計画の活用をきっかけとして、まちの賑わいづくりやコミュニティ形成に持続的に展開するプログラム提案が求められた。つまり、空間デザインやインスタレーションの創造性だけでなく、まちへ波及するソフトプランの実効性が評価の大きなポイントだった。
 そのような観点から考えると、最優秀賞の「多様なきっかけを生む、スタイロの丘をつくる」は、人が滞留するきっかけだけを創り、活用プログラムは公募するという潔い提案だった。その割り切りをどう評価するか審査の論点となったが、テラス計画が本来持っている「眺望」機能という役割とその課題に焦点を絞り、ブロックを積み上げて立体的な居場所を生み出すというストレートなアプローチが明快で説得力があり、デザイン的にも確かな経験に基づく魅力的なものだった。
 一方で、奨励賞の「図書のコミュ二タス」は、最優秀賞とは真逆に、人を集め交流することに特化した提案だった。意識的にまちづくりに関わる人とそれ以外の人をつなぐきっかけの一例として本の提供とレンタルの仕組みをとりあげているが、提案者がこれまで任 意に実践してきた音楽コミュニティ活動との連動と人的ネットワークにも期待を込めての選定だった。
 審査会を進める中で、この札幌駅前通アワードの意義が議論された。上記2応募提案が代表するように、本アワードは、作品を評価する「コンペティション」以上に、アワードをきっかけに札幌駅前通のまちにコミットしプロジェクトを共に実施する人を選ぶ「プロポーザル」の側面が重要だということである。
 できるならば、応募された方同士が自由に交流しアイデアが交わることで公募の枠を超えて、新たなプロジェクトが生まれていくような展開を今後のアワードに期待したい。

 

白鳥健志(札幌駅前通まちづくり株式会社 代表取締役社長
 第1回目となる今回は、審査の大きな視点を①『眺望ギャラリー テラス計画』の活用、②『まちへの波及性』と考えた。
具体的には、『眺望ギャラリー テラス計画』の活用については、室内部分と屋外部分の両方の空間の活用に加え、原則何人にも開放され眺望を楽しむことが出来る空間としての機能を有することとし、また、『まちへの波及性』に関しては、テラス計画の活用を契機として、持続可能なコミュニティ形成プログラムの構築が成されるものとした。
審査に当たっては、前述の大きな視点に基づき、以下の5項目を判断基準とした。

・場所性|テラス計画の場所や地域の魅力を引き出すような企画かどうか
・波及性|札幌駅前通周辺地域への波及が期待できるかどうか
・持続性|持続する可能性があるかどうか
・共同性|新たなコミュニティの形成に繋がるかどうか
・実現性|実現の可能性が高いかどうか

 「第1回札幌駅前通アワード」の最優秀賞に選ばれたのは、陳婕萱+五十嵐淳建築設計事務所の『多様なきっかけを生む、スタイロの丘をつくる』であった。このプランは、テラス計画の屋外部分(眺望エリア)に土木工事等で使われるスタイロブロックを積み重ねることにより小山をつくり、訪れた人が座りながら眺望を楽しんだり、開かれるイベントの客席としての活用を図るというものであった。
 当該プランは、テラス計画という“場”が持つ「眺望機能」を高めるものとしての評価が高く「場所性」、また、施設設置の費用の低廉化や軽量化に伴う加工のしやすさ等から「持続性」「実現性」も併せて高く評価された。
一方、「まちへの波及性」に関しては、活用プログラムを公募するということであったことから、当該プランの効果性等のイメージを明確に提示できないという欠点があった。
この件に関しては、審査委員会のなかでも論議された点であったが、当該プランに則した活用プログラムの多様な創出が想定できることから、今後の展開(公募によるマッチング等)に大きな期待をし、最優秀の受賞に相応しいものと結論づけられた。
 奨励賞に選ばれたのは、

「You've got letters - 宛先のない手紙が人々をつなぐ - 」
 このプランは、“都市における人々のつながり”をテーマに考えられたもので、宛先のない手紙をテラス計画に出し、その手紙の展示を介して訪れる人との心をつなぐというものだ。インターネットを介したメールの世界では感じ得ない“人と人をつなぐ場”としてのテラス計画の存在を高めるという考え方には、共感を呼ぶところが多くあった。
また、仕掛けが簡素なことから「場所性」「持続性」「実現性」の評価が高く、特に「波及性」「共同性」に関しては特筆されるものがあるが、一方では、参加者を集める手法に困難性が高いと想定されることから、この辺を示す表現が欲しかった。
「宿り木」
 このプランは、テラス計画内部の展示造作プランに目を引くものがあった。小さな木片を素材として高さ180mm、横幅400mm、奥行580mmの林をつくるというものであり、それ自体が作品であり、また他の作品を展示する装置となり得るというものである。
「テラス計画」を訪れる人々に与えるインパクト感は素晴らしいものがあるが、ただ、残念ながら、展開ソフトの説得性が乏しく、「波及性」等が低いものとなったことは残念である。
「図書のコミュニタス」
 このプランは、前述の奨励賞「You've got letters - 宛先のない手紙が人々をつなぐ - 」と同様に、まちづくりへの波及性に重点を置いた作品である。当該プランでは、テラス計画を「本」という生活に身近なものをモチーフに、貸す・展示等の多様なイベントを繰り広げ、人々が集まり情報を発信する場としてとらえていることが素晴らしいと評価したい。
惜しむらくは、より鮮明に「テラス計画」での展示や人々を巻き込むシステム方法などを表現してもらえると、まちづくり部門にふさわしいプランになり得たに違いないと思っている。
 最後に応募作品全体を見て感じたところだが、まちづくり部門では、「テラス計画」でのデザイン等に力を入れるものと、まちづくりへの波及性に力点を置いているものの、二つの面が見受けられた。どちらかに力点を置いてプランを構成することは、わかりやすさから見て歓迎するべきところだが、やはり今後は、これら両面に力を入れた作品がみたいと感じた。
私からの提案の域は出ないが、今回の応募作品・プラン同士でコラボを行うことにより、両方が満足する取り組みが出来ないかと考えている。さて、動いてみようか。

 

まちづくりとアートの未来をつくる「 第1回 札幌駅前通アワード」 応募要項

お問い合わせ先

主催|札幌駅前通まちづくり株式会社

事務局|一般社団法人PROJECTA

TEL| 011-211-4366(テラス計画)

mail|terracekeikaku@gmail.com